top of page

『イノセンス』4Kリマスター公開、攻殻機動隊の未来が現実になるか

  • 執筆者の写真: NKimetenai
    NKimetenai
  • 3月1日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月7日

押井守監督の名作アニメーション映画 "イノセンス" の4Kリマスター版が、28日から二週間限定で一部劇場にて上映されている。

公開20周年を記念し、本作の時系列上の前作である "GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊" も同じく4Kリマスター版で上映されることになった。両作品は連続で鑑賞できるスケジュールが組まれており、攻殻機動隊の世界観に没入する絶好の機会となる。


映画『イノセンス』4Kリマスター版の公式サイトスクリーンショット。

イノセンスは士郎正宗の漫画 "攻殻機動隊" を原作とするアニメシリーズの劇場版で、本で初めてカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された記念碑的作品だ。物語の舞台は、人体の義体化や脳の電脳化が進み、人間の魂の在処や機械と生物の境界が曖昧になった近未来。

テレビシリーズも数多く制作されており、そのダークでリアリスティックな世界観は、多くのファンを魅了し続けている。筆者もイノセンスを何度も視聴してきたが、そのたびに新たな発見がある。


本作の最大の魅力は、圧倒的な映像美と哲学的なメッセージ性にある。前作GHOST IN THE SHELLからさらに進化した映像表現が、観る者を圧倒する。登場人物の緊張感が肌で感じられるほど生々しく描かれており、鑑賞後には深い思索に誘われることだろう。


GHOST IN THE SHELLでは、公安9課の草薙素子をはじめとするメンバーが、凄腕ハッカー "人形使い" を追う物語が展開される。脳をハッキングされた清掃局員が、自分の写真を架空の娘の写真だと信じ込むシーンは、印象に残っている人も多いはずだ。

この作品は、現代における大規模言語モデルの進化をめぐる警鐘とも読める。人形使いとの対話シーンは、まさに人間とAIの境界を問うものであり、劇場の大スクリーンでこそ体験すべき瞬間である。


GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の印象的なシーン。清掃局員が脳をハッキングされ、偽の記憶に気付く瞬間。

「あんたあの部屋でもう10年も暮らしてるんだ。奥さんも子供もいやしない、あんたの頭の中だけに存在する家族なんだ」

「確かに写ってたんだ……俺の娘……まるで天使みたいに笑って……」


イノセンスはその正統な続編として、バトーを主人公に据えて物語が展開される。

巨大企業ロクス・ソルスが開発した少女型の愛玩用ガイノイド "ハダリ" が所有者を殺害する事件をきっかけに、9課のバトーとトグサが捜査に乗り出す。

非常に哲学的かつ難解な作品であり、筆者自身も学生時代には何一つ理解できなかった。しかし、大人になり大規模言語モデルの解説を通じてようやくその台詞の意味を噛みしめることができた。攻殻機動隊シリーズにおいて重要なテーマである魂、"ゴースト" がストーリーの核を成しており、サイボーグやガイノイドのゴーストの存在について、作中で繰り返し哲学的な考察がなされる。


特に、序盤に登場する県警鑑識官ハラウェイとの掛け合いは圧巻であり、一部の視聴者にとっては圧倒されるほどの密度を持つ。しかし、理解が追いつかない場合は一時停止し、ChatGPTなどで解説を求めるのも一つの手だ。

浮遊するディスプレイ、電脳ハッキングによる思考の混濁といったSF的な演出も見どころであり、最新技術に関心を持つ人ならば特に楽しめる要素が満載だ。


現在、ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデルが指数関数的な進化を遂げ、汎用知性(AGI)の早期誕生が現実味を帯びてきた。チューリングテストはもはや過去のものとなり、人間とAIの境界が急速に曖昧になりつつある。

数年後にはAGIを超えたASI(超知能)が登場し、我々がAIに道を譲る時が来るかもしれない。そんな時代だからこそ、『イノセンス』を劇場で観る意義がある。人間とは何か、魂とはどこにあるのか。その問いを改めて突きつける本作を、ぜひスクリーンで体感してほしい。

bottom of page